3. SIDEBURNS (2018-) by Kenichi Nishida Ramsøe
私は彼のヘアスタイリストだ。
KONMASAのヘアスタイルを担当して何年が経つのだろう。
彼との出会いはNYだった。彼を語るのは簡単ではない。
彼のもつ唯一無二の世界観と人間性を一言で表すことは不可能である。
KONMASAの人間としての懐の深さ、思いやり、繊細さ、強い信念、温故知新、センスオブユーモア。
そして芸術家としての常にマニアックな発想、いい意味で裏切られるKONMASAならではの着眼点や切り口、
スーパーコンテンポラリーな作風。
どちらの側面から見ても異彩で、唯一無二の魅力で溢れている。
彼の優しい人間性と前衛的な芸術性から生まれる作品を一体何と表現したら良いのか。
きめ細やかさと大胆なパンク感の融合、、、と言おうか。
時に常人には理解が難しい場合がある。
僕がKONMASAの人となりを知っているからだろう、
彼の世界観は不思議といつも自分にはすっと入って来てくれる。
この芸術家の表現したいこと、メッセージ、世界観を理解し、楽しむことができるのはとても幸せなことなのだ。
誰もが理解できることじゃない。
自分がKONMASAの友になれたことは本当にラッキーだ。
自分の人生にとってかけがえのないもので、自分の人生を振り返った時、
彼と歩んだ時間は間違いなくハイライトのひとつだろう。
そんな彼と作ったヘアのアートワークはどれもマスターピースで、
マグショットをテーマにしたヘアのルックブックは計5冊にのぼる。
さて、作品のインスピレーションは我々の間でしばしば「消費」と呼ばれるGoogleマップを開かず、
街を練り歩きから生まれることが多い。
へとへとになりながら、当てもなく会話をして、自然と街から、何かを吸収していく。
時に1日で20㎞も歩くこともあった。
マンハッタンの碁盤の目を彼と縦横無尽にとにかく歩き回った。
たくさんインスピレーションと学びがあった。
そんな我々の「消費」の最中にNYのジューイッシュコミュニティ
Williamsburg, Borough Parkをしばしば訪れた。
そのエリアはウルトラオーソドックスと呼ばれるジューイッシュしか住んでいない圧倒的アウェー。
禁断の地に足を踏み入れるような感覚。
このジューイッシュとの出会いはKONMASAのSIDEBURNS誕生の発端になっている。
宗教上の理由から、彼らは頭を丸めて、もみあげだけ長く残す独特のヘアスタイルをしている。
初めて彼らのヘアスタイルを見た時、ヘアスタイリストととして衝撃を覚えた。
全身黒の礼服と黒いハット、そしてあのヘアスタイル。
ジューイッシュについて興味を持たずにはいられなかった。
彼らの宗教観や規律、祈り。
現代社会とは全く別の領域で生きている彼らを知れば知るほど呑み込まれていった。
それから数年後、NYを離れたKONMASAはそんな彼らの聖地エルサレムを単独で訪問する。
嘆きの壁で祈る彼らを見て、ひとしきり悟るのだった。
KONMASAの新章。
SIDEBURNSー。
伝説はまた始まる。
by Kenichi Nishida Ramsøe