1. THIS IS A TANK-TOP (2014-) by KENMAX
「近藤雅也は死んだ。僕はKONMASAだ。僕はもうタンクトップしか着ない」
私はこの言葉を、真っ先に思い出した。
友人の口から出た言葉に当時は「何言ってんだ?こいつ」としか思わなかったが、
あの言葉の中には大きな覚悟があったのだと、今では痛感している。
インターン先で出逢ったときは、まだ近藤雅也だった。
洋服が好き、写真が好きという共通点から仲良くなり、色々なことを話すようになった。
ファッションやアートのこと、最近の出来事など話す内容はそこら辺の大学生と大して変わらない。
だがその中でも、彼の話す現代アートの話は特段に面白かった。
作品のことはもちろん、芸術家の性格や歴史的背景を細かく説明してくれ、
あまりアートに関心のない私もいつも惹き込まれて聞いていた。
私から見た彼はまさに『探究者』だった。
この探究者という側面が『近藤雅也』を『KONMASA』に変化させたのだと思っている。
NYで近藤雅也は数々の不運に見舞われた。
その度に、自分の人生についてとことん思考を巡らせていたのだと思う。
考えて考えて考えて考えて考え抜いたことで、近藤雅也という人生を捨てて
タンクトップを着続けるKONMASAとしての人生を始めたのだろう。
写真は、インターン先の簡易スタジオで撮影したものだ。
KONMASA宣言を受けてからまだあまり日が経っていなかったと思う。
インターンの仕事が始まる前の早朝で、私は寝不足だった。
何枚か撮ったうちの1枚を見た瞬間、ボーッとした頭に衝撃が走った。
「これは神だ!」と私たちは笑い合った。
独特の雰囲気を醸し出す1枚。
何気なく切ったシャッターだったのだが、そこには友人の近藤雅也ではなく、
アーティストKONMASAが既に存在していた。
by KENMAX